ベトナム語/表記

ベトナム語/表記

ベトナム語は若干拡張されたアルファベットを使って表記される。これをQuốc ngữ(クオックグー)と言う。「国語」という漢字のベトナム語読みだ。

基本的に表音であり読み方を覚えれは大体の発音はワカルようになっている(発音できるかは別だが・・・) この表記自体はフランス人が作ったものであり、基本的な単語もフランス人によって決められたので作った当時のフランス人のベトナム語ヒアリング能力にもとづいている。なので同じ文字であっても発音が違う、同じ発音でも文字が違うという揺らぎが若干ある。

文末がピリオドとか文頭、固有名詞の頭が大文字とかは英語のシステムがそのまま継承されている。

文章は改行も少なめで高密度に大量にギッチリ書く傾向がある。 これはベトナム語の単語自体が情報密度が薄いので、ある事象を説明するのにまどろっこしくイロイロ修飾をつけて長くなる傾向になることに起因する。 ベトナム語は発音が複雑だが、ベトナム人本人たちもその複雑さを聞き分けられるわけでなく、文脈で意味を判断することが多いらしい。つまり単語だけ取り出してもわからないので修飾をくっつけて意味を限定していく必要があり長くなってしまうのだ。

文章というのは別に知り合いに話すわけではないので、この文脈が薄いという前提で書かなければならない。 なのでどうしても長くなる傾向にある。

書き言葉

基本的に言文一致のようなのだが日本のように全国的に一致しているわけでなく、書き言葉にも方言がある。 なので、どこの出身の人が書いたものかが文章からわかるという。

そして、読んでいて思うのは、書き言葉は、複雑な文法と仰々しい単語を散りばめて、長く書くような傾向がある気がする。 日常的によく使う口語調の単語は少なくなるような感じがあって、「静か」ではなく「静寂」、「大きい」ではなく「巨大」、「あたり、まわり」ではなく「空間」のような言い回しを好んでしている気がする。普通に辞書に載ってないようなイディオムや組み合わせの単語が連発される。

その文章が文化的か機能的かどうかは別として、なんとなく「文章というのはこのレベルの格調で書けないと文章とは言えないですよ!」、みたいな意地とプラライドと見栄のようなモノを感じる。なので、子供向けの絵本ですらそのようは表現になることが多い。

その裏返しなのか、一般的なベトナム人は何かを記録したり伝えたりする類の最低限の文章すら書くのを苦手としているように思える。 文章というモノを書くのにもっとちゃんと書かないといけない、拙い文だと恥ずかしい、書きたくないぐらいのモノを感じる。 それによって逆に文章が上達しないという負のスパイラルになる。 なんとなく、日本人が英語がうまくならない理由と似ている気がする。

このような書き言葉と北部の人の喋りは南部よりも乖離が少ないようで、文書を大量に書くようなデスクワークは北部の人間のほうが有利になっているような気がする。実際そのように思える状況が多い。

地元民の手書き

ベトナムの教育カリキュラムではもっぱら筆記体のアルファベットで行われるようだ。 なのでベトナム人の大半が筆記体のアルファベットを用いる・・・そしてそれが超汚いのでネイティブ以外は読めない。左利きのベトナム人(かなり少ない)の文字はもう宇宙文字である。

そもそも人に読ませるものを書くという文化が日本ほど無いような気がする。手書き文字が非常に適当なのもそのせいかなと。 日本が異常なのかもしれないがベトナムの文房具は壊滅的にひどいものしか売ってない。特にノートは英語練習帳みたいなモノ一択である。

2018年現在はそれなりにまともな文具も売られるようになっている。

フランス式筆記体由来なので通常の英語の筆記体とも微妙に違う。 特に「p」は最後に繋がる部分が完全に分離し「n」を縦にに伸ばしたように次の文字に連結されるため一見「p」のあのお腹がある印象は消滅し単なる縦棒として表現される。 分かりにくすぎる。

声調記号は単語に一個しかつかないので手書きの場合は単語の中ほどに適当に書かれることが多い。

「tiền」のような下げる記号は少し長めの水平の線で表記される場合もある。「tính」のような上げる記号は人によっては、ほぼ垂直の棒線で書く場合もある。 声調記号との誤解を避けるために「i」等の小さいドットを小さい「○」円で記述する人もたまにいる。

90年代前半生まれはぐらいまでは筆記体がほぼ100%だが、90年台後半生まれはブロック体表記で記述する人が増えてきているみたいだ。

手書きの数字

算用数字も独特。これもアルファベット筆記体で書く影響で、やたら曲線的にループを強調したものになる。

  • 「1」はほぼ「∧」に近いような感じ、日本人でも単なる棒のように「1」を書く人と、先を若干折る人がいるがベトナム人は真ん中でボッキリ折るぐらい折る
  • 「2」は書き始めと折り返しの部分をループ気味に強調する
  • 「4」は日本と同じように三角形の頂点部分を繋げないが、角を全部丸めて一筆書きで書く。
  • 「7」は「ヲ」な感じで「1」との区別をつけるために棒を一本横に足す。日本人の「ク」みたいに先を折らない。この一本足す棒をさらに筆記体風に書くので数字の「7」は筆記体の「F」のように表記されることも多い
  • 「9」はアルファベットのブロック体の「g」な感じで最後を曲げる人が多い、日本人のように伸ばして止めない。

ベトナム人のサイン

ベトナム人のサインはファーストネームのみを筆記体で書く、もしくはイニシャルを筆記体で書くというものが多い。

しかもベトナム人の名前のバリエーションは非常に少なく且つ非常に短いので、誰のサインでも1本の線が4回ぐらいジグザクしておしまいという、単なる心電図な人が多い。 短い人だとサインが「n」一文字という人も居る。 そのくせ役所とか銀行は日本人の漢字のサインが読めない、だからアルファベットを併記しろとか、前のサインと少し違うとか言ってくる。コノヤロー

ベトナムはサイン文化でとにかくサインする機会が多い、しかも無意味な書類を大量に作るのも大好き。

記号なし単純アルファベット表記

日本人が全部カタカナで書かれていても(読みにくいが)大体の意味がわかるのと同じように、 ベトナム人も声調記号や特殊アルファベットを使わない単なるアルファベットだけで書かれたのベトナム語文章を読み取ることができる。

特にMMS等では打つの自体が面倒なのでこの単純アルファベット表記のベトナム語がよく使われる。

これは単にネット時代の省略のための正式ではない表記だと思ってたら、 普通に仕事のメールとかでもこの表記を使っていた。

逆に、この記法を使った場合は、ベトナム語の単語順、使用状況を正確にしなければ、かなり通じない文章になってしまうので素人には難しい。

これを使い出すと楽だしベトナム人はいいように解釈してくれるのでいいのだが単語をバンバン忘れていくので使うことはおすすめしない。

省略、変形表記

インターネット、Facebook や SMS/MMS メールでは省略、短縮、変形表記が大量に使われて、ネイティブでも仲間内だけしか通じないような表記がよくされるので、機械翻訳にかけても、辞書を引いてもまったくわからないのでまとめておく。

基本的に発音をベースに変形させているので南部と北部で違うかもしれない。まとめているのはホーチミン市付近でのもの。

ak 文末の「ạ」に若干の勢い、感嘆を「k」で表している。ak 以外にも単語末の「k」は口語的な勢いを表すことが多い。
p ベトナム語の単語頭の「p」は通常「phở」のように必ず「h」を伴って表記されるが、「h」を伴わない単語が使われる場合がある。この場合はその「p」は「b」の代わりとして使われている場合がある。文章的な可愛さを表現したいときに使われるようで深い理由は無い。意味不明なベトナム女子文化である。そもそもベトナムの人は「p」を「b」とほぼ同じ発音で使う
f 「ph」の省略表記としてよく使われる
z 単語頭の「gi」、「d」、「v」表記の代わりに使われる。これも可愛さ、口語感を出すために使われるようだ
k, kg, ko, hok, kng, o, 0 ベトナム語で多用される「không」の省略記法、イロイロバリエーションがある。「hok」は「k」を伴って勢いを表現しているので否定の意味でよく使われる。「o, 0」で表記されるのは位置を表す前置詞の「ở」と紛らわしいので確定する状況(文末での疑問形等)でしか使わない(あんまり見たことない)
単語中のj 単語中の「i」の代わりに使われる。携帯電話のテンキーで打つ場合に「i」よりも「j」のほうがタイプ数が少ないのでよく使われる。
単語頭のj 単語頭の「gi」の代わりに使われる。主には疑問詞「gì」を「j」と時刻の「giờ」を「jo」でよく使われる。
A anh の省略形、大文字で表記されることが多い。「anh」は他の単語の意味も多いのでそれとの混同を避ける意味でも省略が積極的に使われる。
E, e em の省略形、ベトナム語は「e」単独であまり意味のある単語は無いので小文字で書かれることも多い
d 南部では「v」の綴りの代わりに使われたりする「vui vẻ」が「dui de」のように表記されるのだ・・・難しすぎる・・・
dc 可能や許可、恩恵を表す「được」の省略形
c 「chị」の省略として使われていることが多いように思える
単語末の'(アポストロフィ) 声調記号を省略していしまうと誤解があるような単語の場合「上げ」ですよと注釈する意味で単語末にアポストロフィが加えられたりする
u 音が似ているので「ơ」の替りに使われることがある。特に誰かを呼ぶ「ơi」は「ui」、「uj」と綴られることが多い
wa quá の省略表記。音が似てるのでこのように表記される
そのまま英単語 英語をそのまま混ぜ混ぜで書くことも多い。ベトナム語版ルー語のように表記する。
二重母音の「ươ」「uô」の「ô」「ơ」を書かない 書かなくても通じるっぽいが非ネイティブが使うには難易度高し。省略のさじ加減が難しい。
単語末の繰り返し 意味の強調として単語末が繰り返されることがある。文末で「diii」で命令を強調したり単独で「hiii」とか言って笑いを強調したりする
v 楽しいの「vui」の省略形である。「vui vẻ」は多用されるので「vve」のように一単語化して表記されたりする
ng 人名「Nguyễn」さんの省略。冗談抜きでベトナム人は3人に1人ぐらいグェンさんなので何度も打つのが面倒なので省略される
ng 「người(人)」という意味で非常に使用範囲が広い言葉なのでよく省略される。
sn sinh nhat の略で意味は「誕生日」である。sinh nhat vui ve がよく省略されて snvv と表記される。
z 「v」の代わりに用いられる
算用数字 ベトナム語にも慣用句がありその中で数字が使われることがあるが、その数字を算用数字で置き換えることがある

短縮表記

英語は各単語の頭文字を取って短縮して表記することがあるが、ベトナム語も表記に関してはそのようにして短縮する。

しかし、それは「書き」でのことで、それを発音するかというと、ベトナム語はそもそも各単語が1音節しか無いので短縮表記をアルファベットで読んだり(アルファベット読みしても伝わりにくくなるだけでまったく音自体が短くならない)、さらに特別な1個の単語として読み方を変えたりすることは無いっぽい。

数字の表記

数字は全宇宙共通だと思われているがこれもご当地表記があるのだ。

小数点であるが日本では

3.14

のように「.(ドット)」で表されるが、ベトナムでは

3,14

のように「,(コンマ)」で表される

大きな数を表記する時にわかりやすく

1,234,567

のように3桁ごとに区切ることがあるが、この時日本ではコンマを使うが、ベトナムでは

1.234.567

のように.(ドット)を用いる。

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vietnamese/writing_system.txt · 最終更新: 2019-01-06 23:06 by ore