映画 / ヘルボーイ(2019)

映画 / ヘルボーイ(2019)

2021-11-20 Amazon Prime で鑑賞。

デルトロ版 の続編ではなく、デル無しでのリブート版。

世界観の作り込みや美術が大幅ダウン。ヘルボーイの作りも出来の良いコミコンのコスプレレベル。ルックを漫画原作に近づけてもっとダラっとしたくたびれた感を出したんだと思うが映画的な張りが無くて単に安っぽくて小汚い感じになってしまっている。全体的に仮面ライダーレベル、特にエイブを発見する後日談の所とかおまけとはいえ酷い。

ヘルボーイの描写も、粗野なのだが、実は知的で繊細、大いなる運命に苦しむが人間っぽく立ち向かうというイメージではなく、単に粗暴で馬鹿、根はいいサイコみたいな感じでどうしても共感しにくい。そもそもの問題として、実際にそうなのか役者の存在感のなのか、ヘルボーイが妙に小さい。胸板も薄くて、人間役の俳優と隣り合って演技しているとその小ささが目立つ。そのへんの相撲取りよりも小さい。このへんが、コスプレ感であったり、やすっぽさに繋がっていっていると思われる。デルトロ版では尻尾も極太でその描写にもかなり気をつかってたように見えたが、今作は細く、垂れ下がっているだけで、芯が入って意思を持って操作しているような描写はまったく無い。

今作は、エピソードもコミックにかなり近づけてるっぽく、そのへんの下地前提のコミック版の映像化作品の長い予告編とするならやや許せる。

冒頭のエピソード。任務中に行方不明になったヘルボーイと気の合う仕事仲間を探し当てたら、メキシコで吸血鬼になってました、しかも任務は放棄してプロレスラーになっていて、興業に参加して盛り上げてます、完全に意味不明。吸血鬼になっちゃって、町の人を襲ってるならまだわかるが、なぜプロレスラーに転職して、しかもそのプロレスラーがまっとうなプロレスをやっているという・・・

それはそうとして、ヘルボーイはそいつをぶちのめして連れて帰ればいいのに、普通にマイクパフォーマンスからプロレスが始まっちゃって、単なるおふざけプロレスかなと思ったらシュートになり、そう思ったら、仕事仲間が途中からモンスターに変身しちゃって現場は大混乱。こいつはモンスターで暴れたいのか興業を成功させたいのか、よくわからんことに。

ヘルボーイも、そいつに対してガチプロレスでノックアウトでもするのかなと思いきや、いきなりぶん投げてコーナーポストで胸板ぶち抜きスプラッター葬。いや、そりゃモンスター化してるとはいえよくビールを一緒に飲んだ仲だって思い出を語ってたじゃない、そいつに対して自らの手で絶対助からないような攻撃する?そこでさらに特に悲しむこともなく話が進む、双方の行動原理や感情がまったく理解できないオープニングでやや困る。

そして、映画を最後まで見ても、吸血鬼のことや、モンスター化して暴れることに関して一切触れない。

全体的に雑に無駄に残酷描写。血がやたら噴き出したり、目ん玉ぶち抜いたり、五体がバラバラになったり風穴が空いたりとか。ちょっとやりすぎ。 途中から、まだやるのみたいな感じになる。敵役も単に残虐に暴れる、グチャグチャに死ぬ、理由も無く悪趣味で気持ち悪い、以外にまったく意思も理由も無く、なんの魅力も無い。

特に、バーバヤーガという鶏足が生えた屋敷に住む、今回のニムエ復活の手引きをした山姥が酷く、その造形が、まったく可愛げがなくコミカルでもなく、ただただ醜悪。 デルトロ版は敵にも敵なりの動機、個性、生活、文化、歴史等が感じられるようになっていたが、こいつは最悪。下品な身も蓋もない貞子である。 造形に可愛げも美しさも無い、ただただ醜悪なうえに、背骨が逆エビ状態でブリッジしながら上下逆さまで4つ足ハイハイで移動する、さらった子供を料理して食べる。 全部なんの理由もなく、観客に気持ち悪いと思わせるためだけに登場する。

そんで、こいつがヘルボーイを恨む理由が片目を潰されたからという、適当な内容。もっと残虐な魔女を復活させて、ヘルボーイを地獄の王として覚醒させて、地球がグチャグチャになっても、こいつには1ミリも復讐になってない。愛するモノが死ぬみたいな話もしてたが、普通に愛するモノを殺せばいい話で、わけがわからない。

ヘルボーイの誕生譚がナチとラスプーチンに召喚されたみたいな話になっているかとおもいきや、イギリスのアーサー王の末裔の魔女が地獄で悪魔との間に作った子供だということになって、このへんの召喚の繋がりがまったく語られないまま、つまりヘルボーイはアーサー王の血筋だから、エクスカリバーを抜いて王になる運命なんだと。悪魔と魔女のアイノコなので悪い方の王になるのだと。

なので、あの手この手でヘルボーイにエクスカリバーを抜かせようとするのが敵のゴールになる。 しかし、ニムエは1500年前にアーサー王に倒されて封印されたので、アーサー王の血筋には逆に恨みがあるはず。それに、ニムエは強力な伝染病で国単位で大量殺人する能力があり、そもそもコントロール不能なヘルボーイや地獄の軍団など必要無い。地獄の軍団どころか、手下のたった一匹のイノシシモンスターがモノスゴイ有能で、こいつだけでイギリスは全滅OKな気もする。

ニムエの肉体の一部を保管している、オシリス団もスーパー間抜けで困る。そもそもヘルボーイがヤバイということで、巨人狩りの手伝いという名目で、ヘルボーイを呼び出して、殺そうとする。 つまり巨人狩りは方便でヘルボーイを呼び出して殺すのが目的なのに、この間抜け軍団は、本当の巨人狩りに同行させて、その途中でヘルボーイを殺そうとするのだ。アホか。そこに本当の巨人が現れてヘルボーイにとどめを刺す直前で巨人にやられて全滅するという間抜けっぷり。デルトロ版が全体的にダークなトーンで現実と異世界の中でヘルボーイが活躍するという流れだったのに、この巨人狩りシーンは、真っ昼間の野っ原で、陰影が薄く、重みが無く、コスプレ感が炸裂している。

ダークナイトライジングでも普段は闇夜の中、一匹狼のバットマンが人知れず悪を刈るなイメージとはまったくかけ離れて、真っ昼間に逃げも隠れもせず広場で敵と正面から殴り合うという世界観ぶち壊しシーンがあったが、あれと似ている。

そもそも、このオシリス団、ヘルボーイが適当なその辺に普通に沸くモンスターを殺す用の電撃の槍で殺せると思ったのだろうか? そもそも、ヘルボーイの弱点ってなんなの?デルトロ版ではエルフの王子に特別な槍で心臓を刺されて死の淵までいったので、なんか特殊な武器で肉体を破壊すると死ぬのだろう。

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contents/movie/hellboy_2019.txt · 最終更新: 2021-11-22 12:42 by ore